Lab Automation
フローリアクター・自動合成装置を利用した新規合成手法の開発
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<フロー>
フロー反応は、通常用いられる「フラスコ」を用いる合成法とは異なり、反応場として流路を用いる手法です。我々はフロー反応の利点を「過剰反応を防げること」「単純な繰り返し反応を得意とすること」と捉え研究を行っています。具体的には、脂肪酸類や機能性分子の合成法の開発に取り組んでいます。
また、流体として気体試薬を用いるフロー反応についても研究しています。酸素や二酸化炭素をはじめとする気体試薬は比較的安価で大量に使用することができます。過剰な試薬を分離したりする作業が簡単になるという利点もあります。
<自動合成>
多くの場合、医薬品は化学反応を駆使して作られます。これまで化学反応は、「フラスコ」と呼ばれる容器の中に試薬を投入することによって行われてきました。このやり方は100年以上前からほとんど変わっていません。多くのものづくり産業が自動化されている中、化学反応も自動化がなされれば、いつでも誰でも医薬品を作り出すことができるようになります。
2013年 近畿化学協会合成部会 銅金賞 受賞 (高橋教授)
2014年有機合成化学協会ADEKA 研究企画賞 受賞 (酒井講師)
「生合成模倣的フロー合成による脂肪酸誘導体の合成」
公益財団法人 旭硝子財団2016年度研究助成 採択 (増井講師)
「マイクロフローリアクターを活用した安全かつ効率的ヒドロホルミル化反応の開発」
2017年有機合成化学協会カネカ 研究企画賞 受賞 (増井講師)
「二酸化炭素からアミノ酸を合成するためのモジュラーフロー設計」
2018年有機合成化学協会岩城製薬 研究企画賞 受賞 (鰐渕講師)
「マイクロフロー化学を基盤とした[1.1.1]propellaneライブラリーへの応用」
Masui H, Yosugi S, Fuse S, Takahashi T, Solution-phase automated synthesis of α-amino aldehyde as a versatile intermediate, Beilstein J. Org. Chem., 13, 106-110 (2017).
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Protein-Protein Interaction
ヘリックス模倣ライブラリーの構築
with 東京工業大学 東京農工大学
PRISM BioLab Co., Ltd.
タンパク質間相互作用は、新しい創薬の標的として世界中の製薬企業および大学で注目されています。タンパク質間の相互作用は作用面積が広大で浅いため、小さな分子で阻害することは非常に困難です。したがって、これまで抗体のような大きな分子を用いた阻害剤が盛んに研究されてきました。しかしながら、抗体は細胞の中に入ることができないため、細胞内のタンパク質間相互作用を阻害することはできず、小さな分子の阻害剤が求められています。創薬研究センターでは、株式会社PRISM BioLabとの共同研究により、ヘリックス模倣ライブラリーの構築を試みています。ヘリックスは多くのタンパク質に見られるらせん構造であり、このらせん構造を模倣した小さな分子を用いることで、上述のタンパク質間相互作用を阻害できるのではないかと期待しています。
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
平成27年度「創薬基盤推進研究事業 (3次公募)
研究開発課題1:次世代創薬シーズライブラリー構築プロジェクト 採択 (高橋教授 増井講師)
「次世代ヘリックス模倣ライブラリーの構築」
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Photochemical reaction
光酸化還元反応を用いた新規合成手法の開発
可視光を利用した化学変換が世界中で報告されており、特に、遷移金属錯体や有機色素を触媒とする光酸化還元反応は、従来の極性官能基同士の結合形成では実現不可能な反応が進行することから、非常に注目を集めています。フロー法による高効率かつ大量合成に適した実用的光反応の開発と、これを活用した中分子合成に有用な化合物ライブラリー構築を目的に研究を行なっています。
公益財団法人 山田科学振興財団2018年研究助成 採択 (庄司教授)
「新しい光・フロー反応の開発と希少生理活性天然物の効率的合成への展開」
PET / SPECT
PET・SPECT 技術を基盤とする創薬加速技術や診断薬の開発
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with 神戸大学 東京工業大学 京都大学
Nihon Medi-Physics Co.,Ltd.
PET(Positron Emission Tomography、陽電子断層撮像法)は放射性同位元素を用いた画像診断法で非侵襲的に脳や心臓などの臓器を診断できる有用な方法です。このPET 診断には化学合成により作られる化合物(PET プローブ)を用います。我々の研究室では副生成物を簡単に除去できる簡便なPET プローブの合成法を研究しています。
Sakai Y, Asakura Y, Morita M, Takahashi T. Concise synthesis of hydroxy β-methyl fatty acid ethyl esters. Chem. Pharm. Bull. 65, 1195-1198 (2017).
Takeuchi R, Sakai Y, Tanaka H, Takahashi T
Solid-supported reagents composed of a copolymer possessing 2-sulfonyl mannosides and phase-transfer catalysts for the synthesis of 2-fluoroglucose, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 25, 23, 5500–5503 (2015).
18F標識化合物の製造方法及びその方法に用いる高分子化合物
高橋 孝志, 田中 浩士, 中田 力 (WO2011099480 A1)
6-デオキシ-6-放射性ヨード-d-グルコースの製造方法、及びその方法に用いる高分子化合物
高橋 孝志, 畑澤 順, 田中 浩士, 長崎 淳 (WO2016084193 A1)
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C-tracer
患者負担の少ない診断薬の開発
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with 国立精神・神経医療研究センター
からだの状態を示す指標として息のガス成分を検査する呼気分析方法や、診断方法の研究が行われています。呼気を使用する手法を行うためには迅速かつ使用者負担が少ない効率的なものが求められています。そこで炭素の安定同位体13Cに着目し診断薬の開発を行なっています。
Teraishi T, Kajiwara M, Hori H, Sasayama D, Hidese S, Matsuo J, Ishida I, Kajiwara Y, Ozeki Y, Ota M, Hattori K, Higuchi T, Kunugi H, 13C-phenylalanine breath test and serum biopterin in schizophrenia, bipolar disorder and major depressive disorder, J. Psychiatr. Res, 99 142-150 (2018)
13C-NMRを用いた5-HydroxyindoleからL-[2-13C]-5-Hydroxytryptophanへの酵素変換反応の詳細な観察 梶原康宏、高取和彦、寺石俊也、功刀浩、梶原正宏、安定同位体と生体ガス、9(1), 4-10 (2017)
High selective Anti-bacterial compound
抗菌作用を有する化合物の
構造活性相関研究と脂質相互作用の解明
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with 尚絅大学
Interprotein Co.,Ltd.
ピロリ菌のヒトへの感染は、消化性潰瘍や胃癌の発症と密接に関連することから、現在、本菌の除菌治療が積極的に行われています。ビタミンD3分解産物のVDP1が胃がんの原因菌であるピロリ菌に対して選択的な殺菌作用を示すことを発見しました。VDP1は、脂肪酸側鎖として炭素数14のミリスチン酸を結合するミリストイル・グリセロリン脂質に対して高い結合親和性を示し、そのミリスチン酸分子に致命的な構造変化を誘導します。最も主要な膜脂質成分としてミリストイル・グリセロリン脂質を保有するピロリ菌では、VDP1との相互作用により膜構造の不安定化が誘導され溶菌が惹起されますが、VDP1は、最も主要な膜脂質成分として炭素数16のパルミチン酸を結合するパルミトイル・グリセロリン脂質を保有する大腸菌などの一般細菌に対しては溶菌作用を全く示しません。つまり、特定の脂質分子間では、単なる疎水的相互作用だけでなく、選択的 (或いは特異的) 相互作用が存在することを発見するに至ったわけです。この理論に基づいて、これまでにない全く新しい作用機序によりピロリ菌を選択的に殺菌する、いわゆる極狭域スペクトルの抗菌薬を開発しています。
抗ピロリ菌剤
下村 裕史, 細田 浩一, 平井 義一, 高橋 孝志, 鰐渕 清史 (特許 6397695)
鰐渕 清史、伊原 聖人、下村 裕史、庄司 満、高橋 孝志, “極めて選択的にピロリ菌を殺菌する新規抗菌薬の研究・開発” 新規素材探索研究会 最優秀ポスター賞 (2018年)
K Wanibuchi, K Hosoda, M Ihara, K Tajiri, Y Sakai, H Masui, T Takahashi, Y Hirai, H Shimomura, " Indene compounds synthetically derived from vitamin D have selective antibacterial action on Helicobacter pylori", Lipids, 53, 393–401 (2018)
K Hosoda, H Shimomura, K Wanibuchi, H Masui, A Amgalanbaatar, S Hayashi, T Takahashi, Y Hirai
Identification and characterization of a vitamin D3 decomposition product bactericidal against Helicobacter pylori, Scientific Reports, 5, 8860 (2015).
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)
平成26年度第2回 【FS】シーズ顕在化タイプ 採択 (高橋教授 鰐渕講師 増井講師)
「コンビナトリアル合成を基盤とする抗ピロリ菌薬の開発」
科学研究費基盤事業 (基盤研究C, H28-H30) 採択 (鰐渕講師 高橋教授 増井講師)
「抗ピロリ菌活性物VDP1の効率的合成」
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Anti-Cancer agent
抗がん剤開発
with 慶應義塾大学 宮崎大学 東京工業大学 北里大学 尚絅大学
抗腫瘍活性を有するコチレニンAの全合成研究
K Kuwata , K Hanaya , T Sugai, M Shoji, Chemo-enzymatic Synthesis of (R)-5-Hydroxymethyl-2-isopropyl-5-methylcyclopent-1-en-1-yl Trifluoromethylsulfonate, a Potential Chiral Building Block for Multicyclic Terpenoids, Tetrahedron: Asymmetry., 28(7), 964-968 (2017).
M Furuta, K Hanaya, T Sugai, M Shoji, Synthesis of trans,trans,cis-Fused Tetracyclic Skeleton via Radical Domino Cyclization, Tetrahedron., 73(16), 2316–2322 (2017)
科学研究費基盤事業 (基盤研究C, H30-H32) 採択 (庄司教授)
「新規抗がん剤創製のためのテルペノイド配糖体の合成およびプローブ調製に関する研究」
大腸・胃がんの新分子標的Nox1システムの選択的阻害剤NOS31に基づく抗がん剤の研究開発
T Yamamoto, H Nakano, K Shiomi, K Wanibuchi, H Masui, T Takahashi, Y Urano, T Kamata
Identification and characterization of a novel NADPH oxidase1(Nox1) inhibitor that suppresses proliferation of colon and stomach cancer cells, Biological and Pharmaceutical Bulletin., 14, (3), 419-426 (2018).
コンビナトリアル合成による胃がん細胞 MKN45 cell 障害活性を指向とした抗がん剤研究
Organic thin film solar cells
有機薄膜太陽電池の開発
with 京都大学 東京工業大学
S Fuse, K Matsumura, A Wakamiya, H Masui, H Tanaka, S Yoshikawa, and T Takahashi
Elucidation of the structure-property relationship of p-type organic semiconductors through rapid library construction via a one-pot, Suzuki-Miyaura coupling reaction, ACS Comb. Sci., 16, (9), 494-499 (2014).
戦略的創造研究推進事業CREST
研究領域「二酸化炭素排出抑制に資する革新的技術の創出」
研究課題「有機薄膜太陽電池の高効率化に関する研究」 (高橋教授 増井講師)
with 東京工業大学 九州工業大学
Kanto Natural Gas Development Co., Ltd.
Dye-sensitized Solar Cells
色素増感太陽電池の開発
S Irie, S Fuse, M Maitani, Y Wada, Y Ogomi, S Hayase, T Kaiho, H Masui, H Tanaka, and T Takahashi
Rapid Synthesis of D-A'-π-A Dyes through a One-Pot Three-Component Suzuki–Miyaura Coupling and an Evaluation of their Photovoltaic Properties for Use in Dye-Sensitized Solar Cells, Chem. Eur. J., 22, 2507–2514 (2016).
光電変換用増感色素、その製造方法および該色素を用いた光電変換素子
高橋 孝志, 増井 悠, 布施 新一郎, 海宝 龍夫, 和田 雄二, 米谷 真人, 早瀬 修二, 尾込 裕平
(特許公開2016−157837)